私がオーガになってから出逢った沢山の友人達。
皆私よりも遥かに強いのに、そんなことは歯牙にもかけず、冒険へと誘ってくれる。
普段からよくPTを組む人もいれば、滅多に会えないけど何故かウマが合う人まで様々。
中でも、ミドリは初対面のときから妙にウマがあう気がしてた。
彼女は多忙で、あまり一緒に冒険はできなかったけれど。
高Lvな癒しの魔法を操る彼女に助けられたことは一度や二度じゃない。
共に過ごした時間以上に、彼女には惹かれる何かがある気がする。
冒険に出れば姉の様に頼もしいのに、日常生活は妹の様に目を離せない。
そんなミドリに、姉を喪った私が甘えてただけかもしれないけれど。
そんな大切な人に、私は酷いことを頼まなくてはいけない。
『あのね、ミドリにお願いがあるんです・・・』『ん?どうしたの?改まって??』『私と・・・2人だけで・・・』最後はほとんど言葉にならなかった。
そんな私に、ミドリはいつも通り優い視線をおくっている
『いいよ。もみじが傷ついたら、私の魔法で癒してあげるよ。』『いつもごめんね。』『私を誘ってくれて嬉しいよ』『ごめんね。ありがとう・・・』『そんな顔しないの!そうだ。一緒に七夕の祭りに行こう!』『え?』『願掛けだよ♪短冊に願い事を書いて飾るんだよ♪』決戦を前に、2人でお祭りか・・・。
高まった決戦への闘志が鎮火してしまう気もするけれど、最後にミドリと楽しい想い出も作っておきたい。
結局2人でお祭りに行ってから、決戦に臨むことにする。
祭りの会場には恋人達がたくさんいて、ミドリと2人で歩いていると恋人にでもなったみたいな気がしてくる。
同性だよ。
それに、これは決戦を前にした吊橋効果だよ。
そう思っても、ドキドキが止まらない。
星を眺めてるミドリに思わず抱きつく。
ミドリは何も言わない。
ただじっと、星空を見上げてる。
『ごめんね・・・』ミドリには聞こえないように、そっとつぶやく。
そして、改めて誓う“必ず生きて帰る”と。
七夕のお祭りは楽しんだ。
ミドリには内緒だったけど短冊に願いも書いた。
流れて消えるかもしれない星に願っても。
その願いは叶わないかもしれないけれど。
無謀な戦いに巻き込んでごめんね。
でも、貴女が傍に居てくれれば私はきっと頑張れる。
さぁ、行きましょう。
過去の恨みを凌駕する、私の現在を輝かせてくれる人達のために。
この世界の未来を賭けて。
ミドリとなら、きっと2人でも冥王に勝てるって信じてる。
冥王の心臓。
凶悪なモンスターが跳梁跋扈する恐ろしい世界。
でも。2人一緒ならこのくらいの敵は怖くない。
消耗はなるべく避けたいから、可能な限り敵からは逃げるけど。
何度か道に迷いつつ、ついに冥王の玉座までたどり着いた。
闘志は高まってる。
でも不思議と落ち着いてる。
重く大きな扉が、しかし予想に反して軽々と開く。
ついに仇を討つときがきたのだ。
冥王の前で臨戦態勢に入る私に、しかし冥王はまともに戦おうとすらしない。
死者の魂を操り、私の四肢を拘束する。
不意をつかれて私はあっさりとこの縛鎖に絡め取られてしまう。
ミドリが必死に外そうとしてくれてるのに、びくともしない。
動けない私に、容赦なく攻撃をしかけてくる冥王。
また・・・
また何もできないまま終わってしまうの?
絶望しかけたとき、力強い光が私達をかばう。
オーガのもみじだ。
死して尚、死を統べる冥王に抗う気高い魂。
彼女が死者の魂を抑え込み、私を封じる呪縛から解き放つ。
絶望するにはまだ早い。
オーガのもみじも、ミドリも。
まだ諦めていない。
私が諦めたら2人に顔向けできない。
再び湧き上がる闘志。
私は決して強くない。
同じLvの冒険者と比べても、装備は安物だし膂力だってたいしたことない。
でも、だからこそ培ってきたスキルがある。
敵の刃を砕き、己の守備力の低さを補い。
兜を割って己の攻撃力の低さを補う。
短期決戦は望めないけれど、ゆっくりと確実に相手にダメージを与える。
でも、これは僧侶のミドリに負担を強いる戦い方。
ミドリはそれを承知で付き合ってくれてる。
────だったら
落ち着こう。
冥王は強大だけど、いつも通りやればきっと勝てる。
しかしさすが冥王、刃を砕いて尚1撃が重い。
ミドリがスクルトをかけてくれなかったら、きっともっと辛かった。
さすがミドリ。
やっぱり頼れる。
ミドリだけは何とか守りたいのに、鍔迫り合いでじりじりと追い込まれる。
強い。
ミドリがすかさずズッシードをかけてくれる。
これで鍔迫り合いで押し込まれることはなくなった。
どれほどの時間、刃を交えたのだろう。
決して強くない私が、ミドリのお陰で少しづつ冥王を追い込み。
ついに冥王が膝をつく瞬間がやってきた。
────しかし冥王もまだ諦めてはいなかった
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後編すごく楽しみ。
短冊何書いたかすごく気になるんだけど!
もう見れないよね・・・残念><