数日後、グランゼドーラ国王をはじめ、叡智の冠の賢者達へと報告を終えたワカむーは凪組暗部詰め所へと赴いていた。
極秘とはいえ、隊士を動員した義理からなぎ局長ととらちよ暗部頭領への報告の許可を得ていたからだ。
暗部詰め所の奥座敷に再び局長と頭領、ワカむーとしづるが集う。
いつものように茶菓子とお茶を運んできたゼクティに人払いを頼んだ後、報告会が行われた。
『─────と、いう訳でなかなかに大変な任務だったヨーw』と、お茶菓子に出されたお団子を頬張りながら、いつもの軽い口調でワカむーが報告する。
いや、全く大変そうに聞こえませんよ!?という言葉をしづるはぐっと飲み込む。
結局、ワカむーはこの報告会の席でも”恐怖の化身”については深く触れなかった。
大魔王が魔物を召喚し、それを倒すことはできたが結界を破壊するには至らなかった、とだけ報告したのだ。
しづるにはそれが気にはなったが、それはきっと余程の事情が、或いは因縁があって軽々しく口にできないのだろうと自分を納得させる。
別に口止めされてる訳ではないが、口を挟むべきでもないと感じたからだ。
『本当に大変だったのだな。半ば強引に任せて悪かったな、しづる。』とらちよが本当に申し訳なさそうにしづるに詫びる。
『いえいえ、こうして無事に戻れましたし、良い経験にもなりました。』と、しづるが応じる。
『ともあれ、ご苦労様でした。勇者姫の盟友と、それを補佐できる人材が凪組にいることを誇りに思いますよ。』局長らしい労いの言葉だ。
『いずれ各国から当該地域への立ち入りを制限するなり禁止するなりの通達が出るでしょう。それまではこちらも動きようが無いですね。』『そそ。いくら事情を知っているとはいえ、各国からの通達を前に隊士達に立ち入り禁止を指示する訳にもいかんからネw局長の立場上、もどかしいだろうけどー』隊士達への通達に関する意思統一ができたところで報告会はお開きとなった。
ゼクティに人払いはもういいと告げ、一緒に茶話会を始める。
一連の事件はまだ始まったばかりだ。
でも、今出来ることは全てやった。
任務遂行はできたが充足感を得ることはできず、己の力不足を痛感しただけに終わったけれど、なればこそ今後起きるであろう大魔王との決戦に向けて鍛錬を行わなければという気にさせた。
それは、ワカむーや勇者姫も同じだろう。
物語が始まったことを告げて一先ずこの物語は終わる。
次の物語へと続かないことを願いながら。
終劇
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