冥王を討ってから結構な月日が流れていたが、その間にも色々あった。
勇者姫が覚醒したこと、そして信じられないことに私がその勇者姫の盟友であること。
アストルティア各国の王族や、叡智の冠と呼ばれる賢者様達とも親しく付き合うことができてしまうほど、濃密な日々を送っていた。
もちろん、旅先で新たな友人にも恵まれた。
夏が過ぎ、暦の上では秋になった頃、私は旅の途中で知り合ったユージュという名の書家のもとへ訪れていた。
彼もまた、旅先で親しくなった友人の1人だ。
『あれ?もみじさん、珍しいですね、こちらに顔を出されるなんて。』ウェディ族独特の明るい澄んだ声でユージュがもみじに声をかける
『お忙しいところ申し訳ないのですが、ちょっと一筆お願いしたくてお伺いしました。』『いいですよ。どんな書をお望みですか?』問いに答え、字体等の細かな希望を伝えると
『わかりました。なるべく早く仕上げますね。』と応じてくれた。
ユージュの書く流麗で力強い文字が私は好きだ。
だから、勇者の盟友として重要な任に就くにあたって、彼の書いた書を道具袋に忍ばせておきたかった。
ほどなくして、ユージュから依頼しておいた書が届いた。
これで必要なものは揃った。
あとは、任務に同行してくれる友人に声をかけるだけだ。
ソーラリア渓谷での異変の調査、勇者姫も同行するこの任務に同行して貰う以上、手練れの僧侶が必要だろう。
となると、真っ先に思い浮かんだのが旅先で知り合った僧侶のてぃだ。
彼女と仲のいいバトルマスターのレシムもかなりの手練れだし、この2人に同行して貰うことにして、連絡をとる。
『おっけー』『いいですよ~』両人とも二つ返事で了承してくれる。
このエルフ族の娘達はとても仲がいい。
見ていて微笑ましいくらいだ。
姉妹のように友人のように、仲良くしている彼女達を見ているのが好きなのだけど、今回は彼女達に無茶をさせてしまうかもしれないと思うと少し気が重かった。
調査の支度を整え、ソーラリア渓谷の入り口に差し掛かったところで勇者姫が合流した。
だが、ゆっくり挨拶を交わすこともできないほど事態は急を要していた・・・。
※もみじSIDE前編についてはネタバレ防止が困難なため、鍵つきのままとさせていただいています。ネタバレOKな方のみ『itudattesakusennha』とパス欄に入力すると読める仕様です。PR